第1回新春スペシャル対談企画

地域のにぎわいを創出し、商店街を活性化させた
「天理本通りマルシェ 本ぶらサンデー」
イベントを通して見えてきた物とは
地域のにぎわいを創出し、商店街を活性化させた
「天理本通りマルシェ 本ぶらサンデー」
イベントを通して見えてきた物とは
天理市の本通商店街にある創業140年余りの酒蔵。手作りにこだわり誰もが行きかえる開かれた酒蔵であり、人と人との繋がりを大切にされている稲田酒造。今年創業100周年を迎え、地元に根ざした地域貢献性の高い仕事が増える中、ITを積極的に導入・活用し「モノづくりの会社」から「お客さまのお困りごとを解決する会社」への転換を推進する天理時報社。そんな二人の代表より、今後の会社のあり方や地域との関わり方、町おこしの展望など、熱く語っていただきました。
稲田酒造と地域に根ざす酒造り
地元の水と米、人の力を活用して、「地元の景色が見えるお酒」をコンセプトにしています
老田:初めに会社の略歴など、簡単に教えていただけますか。
稲田: 稲田酒造の歴史は天理教とともにあります。もともと天理教の教会本部がある場所でお酒造りを始め、その後引っ越しを経て現在の場所に落ち着きました。当初は庄屋敷村の一角に過ぎなかった地域ですが、駅や商店街が発展し、今では街の中心となっています。
私たちが特に誇りに思っているのは、地域に根ざした酒造りの伝統です。地元の水と米、人の力を活用して、「地元の景色が見えるお酒」をコンセプトにしています。昭和49年の日本酒ブームを経て、業界全体が縮小する中、私たちは地元とともに生きる酒造りを続けてきました。
老田: 商店街の真ん中に位置していて、地域に密着していますね。
稲田: はい。商店街の「中ほど」に位置しているため、多くの人々に親しまれています。商店街を歩いていただくきっかけとなるよう、お客様にはよく「中ほどにあります」と案内しています。この場所は地域の変遷とともに成長してきました。
地域とのつながりは、私たちの酒造りの根幹です。たとえば、地元の水を使用することで、その土地の特性が反映された味わいを生み出すことができます。また、地元の人々と協力してイベントを開催し、酒造りの魅力や背景を共有する取り組みも行っています。このように、地域全体で酒造りを支える仕組みを大切にしています。
近年では米の確保が難しくなることもありましたが、その年ごとの条件を受け入れながら、地域と共存する酒造りを続けています。たとえば、米が確保できなかった年には他県の米を使うこともありますが、それでも「地酒」としてのアイデンティティを守り続けています。私たちにとって、地元に根ざすことが最優先です。

天理時報社の使命と地域貢献
天理市全体の活性化に貢献し信頼関係を深める
老田: 天理時報社の歴史について教えてください。
専務: 天理時報社は大正14年に、天理教の原典を印刷するための施設として創立されました。その後、昭和15年に株式会社化し、一般企業向けの印刷も手掛けるようになりました。長い歴史の中で、地域とお客様に寄り添う使命を受け継いできました。
技術革新の波に対応するため、約30年前にはデジタル印刷技術を取り入れるなど、業界の変化に積極的に対応してきました。最近ではDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、デジタルと紙媒体を融合したサービスを提供することで、情報発信の形を進化させています。
印刷会社としての役割は、単に製品を作るだけでなく、お客様が求める情報やメッセージを適切に届けることにあります。そのために、印刷物の品質を高めるだけでなく、デジタル技術を駆使して、時代のニーズに応えられる新しいソリューションを提供しています。
老田: DX推進の背景にはどのような考えがあるのですか?
専務: 印刷業界は「紙離れ」が進む中で、従来の印刷物だけではなく、デジタル媒体を活用してお客様のニーズに応える必要があります。単に印刷を納品するのではなく、情報を正確かつ効果的に発信する役割を担っています。私たちにとって重要なのは、「紙かデジタルか」という二択ではなく、両者を融合させていかにお客様に価値を届けるかです。
また、地域社会への貢献も私たちの重要な使命です。たとえば、地域イベントへの協力や、地元企業との連携を通じて、天理市全体の活性化に貢献しています。これにより、地元の皆様との信頼関係を深めることができています。

地域イベント「本ぶらサンデー」とその意義
「人と人がつながる場」をつくる
老田: 地域イベント「本ぶらサンデー」について教えてください。
稲田: 「本ぶらサンデー」は、商店街を舞台にしたイベントで、地域ににぎわいを取り戻すことを目的としています。このイベントでは、商店街の各店舗や地元の人々、学生たちが一丸となり、訪れる人々に楽しんでいただけるよう工夫を凝らしています。
最初のきっかけは、天理時報社からの提案でした。初回のイベントは天理時報社が企画・運営を担当し、商店街の活性化に向けた具体的な取り組みとして実施されました。その後、2回目以降では、商店街の有志が集まり「本ぶらサンデー実行委員会」が立ち上がり、天理時報社が運営を委託する形でイベントを継続しました。このような形で、地元の関係者たちが主体的に関わる仕組みが整い、より地域に根ざしたイベントとして発展してきました。
イベントの成功は単なる経済効果だけでなく、地域コミュニティの強化にも寄与しています。たとえば、商店街の店主たちが参加者と直接交流し、新たな関係を築く場としても機能しています。さらに、若い世代が地域の課題に目を向け、自ら解決に取り組むきっかけを与えることも、このイベントの大きな意義です。。
専務: 天理時報社もイベントに協力しています。私たちは、単に印刷物を提供するだけでなく、地域のにぎわいづくりに参加することで、地元企業としての役割を果たしたいと考えています。このイベントを通じて、商店街が新たな可能性を見出すきっかけになればと思っています。
老田: イベント運営での課題は何ですか?
稲田: 商店街の一部の方々は、「売り上げへの影響」を懸念されることがあります。しかし、私たちの目指すのは、まず「人と人がつながる場」をつくることです。イベントを通じて、商店街の方々が店頭に立ち、お客様と会話することで、新しい活気が生まれると信じています。さらに、イベントを継続すること自体が大きな挑戦です。新しいアイデアを取り入れながら、毎回少しずつ改善を重ねています。「本ぶらサンデー」は、商店街の方々が地域の可能性を再発見する場としても重要な役割を果たしています。
挑戦と未来への展望
地域やお客様に貢献することが私たちの目標です
老田: 地域活性化の取り組みで、若い世代の役割についてどうお考えですか?
稲田: 若い世代は、柔軟な発想と行動力を持っています。たとえば、学生たちがイベント運営に関わることで、商店街の雰囲気が一変しました。彼らは、従来の固定観念にとらわれない新しい視点をもたらしてくれます。
また、私たちは若い世代に地域の伝統や価値を知ってもらうことも重要だと考えています。そのため、地元の文化や歴史について学ぶ機会を提供し、未来への責任を共有できる環境を整えています。
専務: 天理時報社でも、若い社員の意見を尊重し、新しいアイデアを積極的に取り入れています。従来の方法に固執せず、変化に対応する柔軟性が必要だと感じています。組織全体で一丸となり、地域やお客様に貢献することが私たちの目標です。
老田: 今後のビジョンについて教えてください。
稲田: 地域とともに歩む酒蔵として、伝統を守りながらも新しい挑戦を続けていきたいです。海外展開よりも、地元に根ざした活動を大切にしていきます。私たちは、地域の景色を映すお酒を造り続けることで、地元の誇りを守りたいと考えています。
専務: 天理時報社としても、地域やお客様のニーズに応えるため、新しい技術や方法を取り入れながら、情報発信の役割を果たしていきたいです。私たちの最終的な目標は、地域社会とともに成長することです。

まとめ
稲田酒造と天理時報社の対談は、地域活性化に向けた具体的な取り組みと、その中での挑戦や課題を明らかにしました。伝統を守りながらも革新を追求する両社の姿勢は、地域に新しい価値を提供する原動力となっています。「本ぶらサンデー」のようなイベントは、地域のにぎわいを取り戻すだけでなく、商店街の新たな可能性を引き出す重要な一歩となっています。
この対談を通じて、地域社会における企業の役割や、若い世代が果たすべき責任について考える貴重な機会が得られました。両社の今後の活躍に期待が寄せられます。